東京ミッドタウン八重洲×LIXIL

敷地の土で焼いた「八重洲焼きタイル」で
土地の記憶を刻む

「想いを刻み込む」仕事

──最後にお二人からプロジェクトが実現した感想をお聞かせください。

喜多氏::「八重洲焼きタイル」をプロジェクトで実現するために、仲間の協力が必要でした。まだ現場が落ち着いていた初期の頃の企画イベント、手びねりの陶芸作品づくりでは、参加者各自の「記念の一品」が出来、大好評でした。社内の関係者で何回かに分かれて行い、次はお客様を交えて開催しようとした矢先にコロナが拡大し、イベントが開催できない時期となってしまいました。その代わりに、LIXILさんの「やきもの工房」に再開発組合の方々をお連れして、製品検査や工場見学、ミュージアム視察をさせていただきました。こうしたことも記憶に深く残ります。
取りかかった仕事を決められた通りにこなすことも大変なことですが、そこに更なる「想いを刻み込む」提案が出来て、実現したことはとても嬉しいことです。またとない経験となりました。

川内氏::ずっと小学校らしさとは何だろうと考えていた中で、「八重洲焼きタイル」の提案は、見た目だけでなく、記憶を伝えていくという考え方の上でもとてもふさわしいと思いました。1962年からずっとこの八重洲にあった中央区立城東小学校ですから、その土をタイルというかたちで残せたことは、とてもよかったのではないでしょうか。

LIXIL横川(左)、竹中工務店設計部 川内氏(中央)と喜多氏(右)
LIXIL横川(左)、竹中工務店設計部 川内氏(中央)と喜多氏(右)

──LIXILの現場から

添加量20%の「八重洲焼きタイル」完成までの挑戦

基本的にタイルの原料は不純物を極力排除し、製品の寸法精度、発色安定性、その他不良の発生を抑えるための調合がなされたものを使用します。
現場採取の土を使用した経験は過去にもありましたが、その際は製品に影響を及ぼさない数%の添加量までの対応でした。
今回はできるだけ多く採取した土を使用したい。また、ある程度の色ムラは味わいとしてお考えいただけるとお聞きして、覚悟を決め大胆に試験を進めることにしました。
まずは、原料の分析を行い、鉄分とナトリウム分が多く、高温では釉薬状に溶けてしまうことがわかりました。この土をタイル原料に混合した際の最適な混合率と焼成温度を探るための試験を何度も行い、結果的に添加量20%、通常の焼成温度よりは若干温度が低い1170℃で焼成することで品質が担保できることを見つけ出すことができました。
添加量20%というのは相当に多い配合です。そのため、焼成での変形や、色ムラ、表面の艶の違いなど、通常の製品に比べ1枚1枚のムラが大きくありますが、このムラこそが「八重洲焼き」の味わいなのではないかと思います。
このような素晴らしいプロジェクトに参加させていただき、技術者として非常に幸せに感じております。
改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN
デザイン・新技術統括部 やきもの工房
芦澤 忠

東京ミッドタウン八重洲 データ

所在地 東京都中央区八重洲1丁目地内 ほか
施工事業主 八重洲二丁目北地区市街地再開発組合
マスターアーキテクト ピカード・チルトン(Pickard Chilton)
基本設計・実施設計・監理 株式会社日本設計
実施設計・施工 株式会社竹中工務店
階数 A-1街区 地上45階 地下4階 ペントハウス2階・約240m
A-2街区 地上7階 地下2階 ペントハウス1階・約41m
区域面積 約1.5ha(ヘクタール)
敷地面積 A-1街区 12,390m2
A-2街区 1,043m2(合計 13,433m2
延床面積 A-1街区 約283,900m2
A-2街区 約5,850m2(合計 約289,750m2
構造 S造、SRC造、RC造、制振構造
用途 A-1街区 事務所、店舗、ホテル、小学校、バスターミナル、駐車場 など
A-2街区 事務所、店舗、子育て支援施設、駐輪場、駐車場、住宅 など
竣工 2022年8月
LIXIL使用商品 ■中央区立城東小学校、八重洲ウォーク
外装壁タイル:*0002_)FCB234F/3C/YES(特注)
外装壁タイル:*0003_)FCM227F//YES-A60(特注)
外装壁タイル:*0004_)FCM227Y//YES-B50(特注)
外装壁タイル:*0005_)FCM227Y//YES-C40(特注)

取材・文/フォンテルノ 特記以外の撮影/エスエス企画(人物撮影:フォンテルノ)

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公開日:2023年01月25日