INTERVIEW 003 | SATIS

スタイルをもたないことをスタイルにする

設計:森山善之/建築設計事務所バケラッタ | 建主:Yさま

現場では原寸で判断をする

こうした作業は模型段階だけではありません。現場が始まれば原寸でモックアップをつくり現場に設置、インテリアや照明、アートなども原寸大のモックアップや本物を持ち込んで確認していくのです。気の遠くなるような長い時間をかけて行っていく作業。そこにこそバケラッタの哲学があります。照明器具の大きさやカタチを建主の意思で選んでもらうために妥協しない準備をするのです。そのことによって建主が選びきっている実感と失敗しないセレクトができる環境を整えていると言えます。

水まわりについて

敷地が広く大きな家の建主の場合、水まわりも広くなりがちだそうですが、重要な点は掃除だと言います。掃除もしやすい適度な広さをアドバイスするそうです。また家の掃除を家事代行のサービスなどに頼む方が多いそうですが、毎日掃除に来るわけではありません。水まわりのトイレやお風呂は毎日使うもの、できるだけ毎日簡単に掃除ができるように考えるそうです。

図面を見ながら水まわりの考え方を説明してくれた。

図面を見ながら水まわりの考え方を説明してくれた。指をさしている場所はバスルームに続くコートヤード。

今回サティスを採用していただいた住宅の水まわりですが、洗面、トイレ、シャワー、風呂と一室の空間になっています。そこには段差が設けられ、それぞれ用途がゆるやかに区切られた設計になっています。水道水のカルキの白い粉が水栓金具やガラス面に残らないように、塩素除去装置を入れているそうです。今ではこの塩素除去装置はバケラッタが手がけるほとんどの家に採用しているそうです。水で流すだけで簡単にいつもきれいに保てるからです。こうした細やかな配慮が日々のメンテナンスを軽減するのに役に立つのです。

大きな空間にあう存在感のあるボリュームのトイレ

このように大きな空間をつくるサニタリーですが、そこに設置するトイレには存在感も大事だと言います。どんどんコンパクトになっていくトイレですが、バスルームとつながる広い空間には存在感のあるサティス(Gタイプ)は似合うと言います。横からの視線もとてもよいと。トイレ単独で作っても3m2ぐらいが標準という広い空間の力に負けないボリュームやデザインが必要なのでしょう。

トイレの形や大きさは、広い空間にも引け目を感じないボリューム感が大事だという。

トイレの形や大きさは、広い空間にも引け目を感じないボリューム感が大事だという。

竣工後のメンテナンスを人任せにしない

バケラッタはどんなクレームも自分たちで現場に駆けつけると言います。建主からは24時間365日いつでも連絡がとれる体制になっています。設計の多くは施工用の図面は施工会社が書くものですが、彼らはすべて自分たちで書いています。トラブルに直面した時、自分たちで施工のディテールを把握していることで、適切な対応の判断もできますし、次のプロジェクトへの改良や改善にも結びついていくのです。このような彼らの姿勢が建主にとっての安心感に通じます。今では、全国で設計を手がけるバケラッタですが、どんな場所でも、はじめての施工会社であっても、同じ品質で仕事を完成させていけるのです。

人から人へ

「建主がつくりたい家を実現させる」こうした考えですでに20年仕事をしてきている森山さん、当初からの思いは全く変わっていないものの、長年の積み重ねでそのことがより実現しやすくなってきたといいます。その理由は、設計の依頼のほとんどが紹介だからです。森山さんと一緒に家をつくってきた建主たちからの紹介です。自分たちが何をしたいのか、また森山さんに期待することも理解できているのでお互いに意識のズレがおきません。また急いでやるような仕事も極力しないそうです。現体制で対応できる物件の数にも限りがあるので、じっくりと時間をかけてできる仕事を優先していきたいといいます。こうしたことが結果的にさらによい仕事を生み出し、建主の満足にもつながり、よい循環となっていくのでしょう。デザインへのスタイルをもたないという森山さん、しかし設計の仕方には筋の通った強い一貫したスタイルがあるのです。

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公開日:2017年11月30日