日本の窓を、考える<3>

窓から見える植栽は、家と同時にデザイン

熊澤安子(建築家、熊澤安子建築設計室)

『コンフォルト』2016 August No.151 掲載

緑の窓辺のある暮らしで質の高い空気感に包まれる

「宮前の家」は私のアトリエ兼住まいで、旗竿敷地の長いアプローチにモミジのトンネルをつくるイメージで植栽しました。そして奥には北と南に2つの庭をつくり、北の庭に面してアトリエ、南には食堂・居間を配置し、それぞれの空間にあった植栽をしています。

南の庭は外部テラスがあって、ちょっとご飯を食べたり、遊ぶための庭。いろいろな木を植えた明るい庭です。北の庭は、モミジ1本と日陰で育つ下草の取り合わせで、佇まいがおとなしく光もしっとりして、仕事場の庭にはふさわしい。北側というとマイナスイメージに受け取られがちですが、本来、自然光で植栽がきれいに見えるのは北側のほうですね。

住まいづくりの相談で、この家においでいただくと、窓と庭の関係や植栽の雰囲気を体感していただけるので、おのずと家づくりとともに庭づくりの重要性も理解してくださいます。窓の先に緑があることでぐっと落ち着きますし、家の中で過ごす時間の質が上がるような、いい空気感が生まれます。共感してくださる方のために設計できるのは、とても幸せなことです。

右/家側から接道方向を見る。大谷石のアプローチを覆うようにモミジが続く。長さは20mほど。 左/アプローチ側から外観を見る。上の平面図のようにいったん少し曲がり、視線がずれることで奥深さが感じられる。

右/南庭に面して大きなFIX窓を設けてある。ダイニングテーブルに座ると、ゆったりと庭の緑に吸い込まれるようだ。FIX窓の下部は、防犯用の格子と網戸、開閉建具を組み合わせて、通風専用の窓が設けられている。左側の縦長の窓は庭につながる出入口になっている。下/熊澤安子さん(右)、野草家・造園家の楠耕慈さん(左)。「山の高度によって木の表情は変わるんですが、好みの樹種の話を聞いていると、熊澤さんは里と山の中間あたりの雰囲気が好きなんですね。使っている株立ちは、手間を惜しまない生産者さんが針葉樹林の中で管理したもので、山の環境のまま庭に植えることができるんです。夏の強い光線を樹々が段階的に遮り、山野草も保水性を持っているので、住宅が密集しているところでは小さな庭であっても山の植生が天然のクーラーになります」と楠さん。

右/南庭に面して大きなFIX窓を設けてある。ダイニングテーブルに座ると、ゆったりと庭の緑に吸い込まれるようだ。FIX窓の下部は、防犯用の格子と網戸、開閉建具を組み合わせて、通風専用の窓が設けられている。左側の縦長の窓は庭につながる出入口になっている。下/熊澤安子さん(右)、野草家・造園家の楠耕慈さん(左)。「山の高度によって木の表情は変わるんですが、好みの樹種の話を聞いていると、熊澤さんは里と山の中間あたりの雰囲気が好きなんですね。使っている株立ちは、手間を惜しまない生産者さんが針葉樹林の中で管理したもので、山の環境のまま庭に植えることができるんです。夏の強い光線を樹々が段階的に遮り、山野草も保水性を持っているので、住宅が密集しているところでは小さな庭であっても山の植生が天然のクーラーになります」と楠さん。

インタビュー構成・文/清水潤 撮影/梶原敏英 イラスト/阿部伸二(カレラ)

熊澤安子建築設計室

東京都杉並区宮前3-17-10
tel 03-3247-6017
http://www.yasukokumazawa.com/

野草の庭・茶庭づくり 風(ふわり)

埼玉県新座市野寺3-9-17
tel 048-299-3487
http://www.28fuwari.com/

雑誌記事転載
『コンフォルト』2016 August No.151掲載
https://www.kskpub.com/book/b479874.html

このコラムの関連キーワード

公開日:2016年09月30日