窓上手のテクニック/Livearthリヴアース 大橋利紀の心地よく自然とふれあう住まいのつくり方

設計手法C 心地よさの見える化 3 自然風利用

中間期や夏の夜間に外気を自然風として取り入れることで、「快適性の向上」と「冷房エネルギーの削減」を図るのが自然風利用の狙いです。
手法は3つあります。
@ 卓越風向(季節ごとの頻度の高い風向)に配慮した開口部の設定
A 開口部の複数配置により風の入口と出口を設定
B 開口部の大きさ・高さ・位置を外部環境に配慮して選定

自然風利用4つのステップ

自然風利用技術の検討ステップは4つあり、ステップ2・3は室内の通風シミュレーションで検討します。
ステップ1:気象条件・立地条件・住まい手の意向の確認
ステップ2:通風経路上の開口部面積確保の検討(通風経路・開口面積・室内通風性能)
ステップ3:風圧係数差の確保の検討(卓越風向に応じた開口部、高窓の検討)
ステップ4:防犯・騒音・強風雨への配慮
ここではステップ1からステップ3について触れます。

卓越風向データと周辺聞き取り

[ステップ1]
まず、気象条件・立地条件・住まい手の意向を確認します。
卓越風向のデータはIBECsのホームページからダウンロードすることができ、計画地の卓越風の傾向をつかむ参考になります。ただし、すべての地点を網羅したデータはありませんし、近くに大きな道や川、高層の建物があると風の向きが変わるので、できれば近隣住民の方に季節による風の変化について聞き取りを行うといいでしょう。
卓越風向のデータ
同時に、住まい手にも風に対する考え、スタンスを聞き取ります。窓を開けたくない人、かなり風を感じたい人、微風でいい人、冬でも風を入れたい人などさまざまで、その意向に配慮して開口部を計画します。

風の入口と出口を配置し、風路・風量を見える化する

[ステップ2]
通風経路上の開口部面積を確保します。ここで大事なのは、風の入口と出口を2面以上の壁に配置すること。1面しか確保できない場合は、隣の部屋を経由して通風させます。開口部面積が大きいほど期待できる風量も大きくなります。
風の入口と出口を配置し、風路・風量を見える化する
次に通風経路上の有効開口面積を算定します。『自立循環型住宅への設計ガイドライン』には、手計算で複数の窓の有効開口面積を総合的に評価する手法も紹介されています。
ただ、住まい手には通風シミュレーション[下図]を使って風の流れ方と風量を視覚的に示したほうがわかりやすいと思います。
風速計を使って風速○mはどのくらいの風なのか、数字と感覚を組み合わせて理解することも大事です。
住まい手には通風シミュレーション

卓越風向に応じた窓の配置を考える

[ステップ3 その1]
卓越風向に応じた開口部の位置を検討します。
郊外型立地の場合は、じゃまするものが少なくプランの自由度も高いため、卓越風向に応じて風の入口と出口を設定した窓を配置します。
一方、都市部の過密型立地の場合、卓越風向データがそのまま使えないケースも少なくないので、卓越風向+近隣の聞き取り結果を反映し、窓から見える風景にも注意を払いながら開口部を配置します。無目的に窓を配置すると隣家の壁しか見えない、家具が置きにくいなどの弊害があるので注意が必要です。
「弘長屋の家」
敷地面積240坪ののどかな郊外型立地。南に面した立地と土地の特徴を生かし、太陽に素直に平屋の建物を配置し、それを幅約23mの横長の屋根が覆う形とした。内部は中央にLDKを据え、その南と北に大開口、さらにその先に南の庭と北の庭を配置。南北に抜ける風・光・風景を室内に取り込む
「弘長屋の家」
「織姫の家」
南に高層ビル、東西に3階建ての建物が隣接する過密高層型立地。写真左は、風景の抜けがあり、自然風を直接入れることができる窓。写真正面は、隣家と手が届くほど近く風景的に期待できるものがないため、風を抜くことだけを狙った格子窓
「織姫の家」

高窓を上手に使う

[ステップ3 その2]
高窓は、風下側に設置すると大きな風圧係数差を得ることができ、窓のサイズが小さくても効果があるため利用を検討します。
また、窓で風をつかまえる「ウインドキャッチャー」により2倍以上の風量の確保ができます。
風を入れたい季節の卓越風向に開くようにLIXILの「サーモスX」縦滑り出し窓を設置すると、効率よく風をつかまえられることに加え、スリムなフレームが風景を切り取るのにも適しています。
当社では上位機種の「TW」が選択肢に入ることが多く、よく採用します。
※現在サーモスXは販売終了しております。後継商品はTWをお求めください。
LIXILの「サーモスX※」

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