窓上手のテクニック/Livearthリヴアース 大橋利紀の心地よく自然とふれあう住まいのつくり方

対談B 大橋流「窓の設計作法」
リヴアース代表・大橋利紀 氏×新建新聞社代表・三浦祐成 氏

窓の大きさと位置、壁面の量が大事

三浦:「窓の設計作法」について少し詳しく聞きたいと思います。
居心地
居心地
居心地
居心地
三浦:窓の大きさ、窓の位置、残り壁面の量の3つで居心地が決まる、建築空間をつくることと窓周りの余白を表現することはほぼイコールだというお話がありましたが、具体的にどんなふうに窓を設計しているのでしょうか?
シミュレーションを繰り返しながら窓の大きさや位置、壁面の量を決めているのか、直感的なのか、もしくは既存の窓に合わせているのか。このあたりを教えてください。
大橋:段階があると思います。まずはシミュレーションをやるステップが必要で、それを何十件とこなすうちに、この方位からはこのくらいの日射が入るといったことがある程度感覚的に掴めるようになります。
最終的に窓の設計は感覚によるところが大きくなるのですが、そこに至るまでには、風景を見る窓、風を抜く窓、そこで過ごす場合の視点の高さなど、押さえたほうがいいポイントがいくつかあります。
「暁の家」
暁の家
大橋:この写真の「暁の家」の和室は、天井高さ1900mm、広さ約3畳とすごく低くて狭い空間です。
窓は床からも天井からも30cmちょっとのところに配置しました。
座ると視線のほぼ正面に窓がきて、下桟に肘をかけることができ、落ち着きを感じられる高さ・広さになっています。
これが椅子に座るとなると、落ち着ける高さ・広さはまた変わってきます。
一般的な窓より低い位置に設定することで、床座で窓からの景色がよく見え、しかも窓が低いことで周りに壁という余白ができ、空間にメリハリが生まれます。
窓と壁という対比をしっかりとデザインしてあげることで、美しい空間になりやすいのです。
三浦:納得しました。特に窓の高さは大事で、それに応じて壁をどれだけ壁を残すか、もしかするとテレビをどこにどう置くかも決まっていくんでしょうね。
窓と設計について大橋さんの考えをお聞かせください。
大橋:いいものも、よくないものも、いろんなものが入ってくるのが窓。それを両立的に解決するのが設計だと考えています。そよ風も強風も、木々の香りも排気ガスも、豊かで暖かい冬の日射熱もうんざりするような夏の日射熱も、庭の風景も周囲からの視線も入ってきます。
何をどのぐらい「取得」し、どのぐらい「抑制」するかは設計次第であり、しかもどちらか一方を取ることはできず常に「両立的解決」を迫られます。
絶対的な正解はありませんが、窓をどう扱うか、その考察と選択に設計者の個性があらわれるのだと思います。
三浦:設計全体が取捨選択の連続なのでしょうが、とりわけ窓は取捨選択の要素が多いパーツなのかもしれません。
何を取り入れて何を遮断するのか、豊かなものをいかに増幅しそうでないものを抑えるか、そこに窓上手になるための技量やコツが詰まっているし、設計者の個性につながるカギがある、と。

大橋流窓選びのポイント

三浦:ここからは、皆さんから寄せられた質問をセレクトして大橋さんに投げかけますので、お答えいただければと思います。
では、1つ目の質問から。窓って性能、デザイン、見附の幅などいろんな選択の要素がありますが、大橋さんが窓選びで重視するポイントは?ざっくりとした窓選択のセオリーのようなものがあれば教えてください。
大橋:美しい風景を美しく縁取りたいので、理想は木製サッシを選びたいところです。
ただ、お施主様の予算、好み・考えもありますで、すべて木製サッシとはいきません。
性能と意匠の両立を目指す当社の場合、できれば極太の樹脂枠を入れたくないという思いがあるので樹脂サッシ1択というよりは、アルミ樹脂複合でスッキリとしたフレーム、性能をさらに上げたい場合は木製窓を選びます。
既製品の窓だとLIXILの「TW」を選ぶことが多いです。
三浦:次の質問です。外からの窓の見え方で気をつけていることはありますか?
大橋:住宅の佇まい・印象を左右する窓は、建物の外観にとっても重要なパーツです。
柔らかさを出すなら木製窓、スッキリさせるならアルミ窓、中間ならアルミ樹脂複合窓と木の庇や木の壁を組み合わせます。
高さのバランス、数のバランスも重要です。繰り返すようですが、窓は必ず意図的に配置し、何気なくつけることはないので、窓の数は自ずと減ります。
数は減っても窓の面積が大きくなることはあります。
窓を減らすと外観のバランスはとりやすくはなりますが、それだけでなく、意匠性、内部空間、日射熱、光、風を考慮しつつ全体を決めていくので、外観から決めるとか内観から決めるとか風と光で決めるといった感覚はなく、全部の要素を一気に検討して決めます。

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