窓上手のテクニック/PASSIVE DESIGN COME HOME 木村真二の窓上手になるパッシブデザインのコツ

設計手法E 室温と省エネでみるパッシブデザインの効果

G2とG3で室温に差がない場合も

前述したとおり、室温と省エネは分けて考えることが基本です。
ここからは室温についても考えていきます。
以下に、先ほど示した型によって室温と省エネにどれくらい違いが出るのか比較してみます。
まず室温です。
UA値0.46、パッシブデザインでηAH(暖房期の平均日射熱取得率)を2.6とした「G2バランス型」の場合、朝6時の「自然室温」=暖冷房停止時の室温は15℃程度になります。
一方、UA値0.26、ηAH1.1の「G3高断熱型」の場合、朝6時の自然室温は18℃程度となり、断熱性能が高いぶん、こちらのほうが朝6時の自然室温は暖かくなります。
ですが、「G2バランス型」の場合ηAHが大きい、つまりは晴れの日の日中は日射熱を室内に取り込み陽だまりをつくることができるため、室温は22℃程度まで上昇します。
つまりは暖かい。ηAHが小さい「G3高断熱型」と日中の室温はそう変わりません。
冬の室温を断熱性能から考える

UA値が小さくても省エネにならない場合も

次に改めて省エネをシミュレーションして比較します(使用したのは一次消費エネルギーWEB算定プログラム)。
ひとつは私が標準としているUA値0.40、ηAC(冷房期の平均日射取得率)0.8、ηAH2.6の「バランス型パッシブデザイン」。
もうひとつはUA0.22、ηAC1.3、ηAH1.2の「G3高断熱型」です。
一次エネルギー消費量は前者が49.9GJ、後者が51.3GJで、UA値が低い「バランス型パッシブデザイン」 のほうが省エネになる計算です。
もちろん「バランス型パッシブデザイン」のほうがコストも抑えることができます。
バランス型のパッシブデザイン
換気・給湯・照明・その他設備が同じでも、暖房と冷房のエネルギー消費量がこれだけ違ってくるわけです。
日射熱のコントロールがいかに重要か、それを最適化するための計算・シミュレーションが大事か、つまりはパッシブデザインの重要性がわかっていただけると思います。
ちなみに、この「バランス型パッシブデザイン」の場合、BEIは0.52となります。
前述したようにBEIは0.6以下が基本、できれば 0.55以下を目指したいところですが、それをクリアしています。
当社では今後、BEIが0.5を切る家を当たり前に目指したいと思っていて、それには断熱もパッシブデザインも計算・シミュレーションと実測による確認もしっかりと行う必要があります。
このような室温や省エネ、さらには光熱費の計算・シミュレーション、そして実測データをお客様に見せながらきちんと説明すれば、パッシブデザインの有効性、そしてパッシブデザインを実践している自社の強みが伝わるはずです。

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