窓上手のテクニック/PASSIVE DESIGN COME HOME 木村真二の窓上手になるパッシブデザインのコツ

対談@ パッシブデザインを取り巻く状況変化を読み解く
株式会社PASSIVE DESIGN COME HOME 代表取締役 木村真二 氏×新建新聞社代表・三浦祐成 氏

省エネ基準適合義務化・上位等級設定の影響

三浦:まず私からパッシブデザインに関する情報提供をさせていただきます。

2025年に現行の省エネ基準の適合が義務化され、2030年に等級5(ZEHレベルの省エネ性能)の義務化も視野に入っています。
また、住宅性能表示制度で断熱性能の上位等級が定められ、等級5・6・7がオフィシャルに誘導基準として定められました。
その影響としては以下がありそうだと考えています。

@消費者の関心増→「プロ施主」が一層増える
A自社が提供する住宅の省エネ性能レンジの明確化が必要
B量産会社も省エネ性能のボトムアップへ
C省エネ性能値のみでの差別化が困難に
Dシミュレーション&実測で熱環境をオーダーメイドし満足度向上&差別化に

@の「プロ施主」とは、積極的に情報を収集してよく学び、自身でも情報を発信する施主のことを指す私の造語ですが、今後も省エネ・熱環境について学び発信するプロ施主はさらに増えると思います。

そのなかでAで示したように、自社の標準的な省エネ・熱環境の性能については、数値で言えばこのあたりです、と明確に表示しておいたほうがいいと思います。等級表示+αで。
αの部分は木村さんのレクチャーにあったデザインとの両立や、室温とエネルギー消費量、さらには光熱費などの最適化などがあると思います。

Bはたくさん家を量産しているハウスメーカーやパワービルダーも、断熱性能で言えば等級5、さらには等級6・7の商品を販売するなど性能のボトムアップを始めているので、Cのように断熱性能だけを強みとしていては埋没してしまうようになる。

こうした状況のなか、木村さんが実践してきたパッシブデザイン+Dのシミュレーション+実測に工務店さんも積極的に取り組んで欲しいと考えています。

住宅会社を選ぶ決め手は○○○に

会社を選ぶ決めて 建築半年以内は「担当者との相性」がトップ
三浦:上のスライドは面白い調査結果で、住宅会社を選ぶ決め手について、実際に家を建てた方に聞いたものです。
2位に住宅性能が入ってるのはなるほどですが、1位に「担当者との相性」が入っています。
お客様は担当者=「人」の部分をすごく重視していて、そこが選択の決め手であり満足の源泉になっているということが言えそうです。

人が評価されているということは、計算・シミュレーション、そしてパッシブデザインを含めた設計のスキルを持っている人や、そんな人がいる工務店にとっては、すごく追い風になる話だと思います。

競争力の5つのP=今後は「People」重視へ

競争力は5つのPに
三浦:上のスライドは、私が工務店の競争力を「5つのP」として整理したものですが、先ほどの調査結果と重なるものです。
「People」=ひと、知恵・スキル、カルチャー、コミュニティが今後は大事だと改めて強調しておきます。
もちろん「Product」=商品・住宅そのものは、競争力という点でも満足度でも依然重要ですが、先ほどのように今後は性能などハードだけで競争力を維持することは難しくなっていきます。
そのなかで「People」に加え、プロセス、現場、アフター、顧客対応、コミュニケーションといった「Process」も競争力、選ばれる理由、満足の源泉になっていく。
ここもパッシブデザインを含めた設計のスキルが関わってくるところで、木村さんが良いお客様から支持されている理由はこのあたりにもありそうです。

熱環境をオーダーメイドする=パッシブデザイン

熱環境のオーダーメード=目指す室温・省エネを実現する設計
三浦:このスライドは今回私が一番言いたいことで、「熱環境のオーダーメイド」とありますが、木村さんがレクチャーされたパッシブデザイン、特に計算・シミュレーション、そして実測をしっかりやろうという話そのものです。

実測はとても大事で、最近施主が気密測定に関心をもってきているのも、性能に関してリアリティを重視しはじめているからだと思います。
気密測定はもちろん、室温やエネルギー消費量、光熱費なども実測し、リアルな性能値として見込み客に提示すると同時に、シミュレーションとのズレが大きければ設計施工の標準や方法を見直して是正する。

こうしたプロセスのなかで、これまで不確かだったことが明確になったり、常識だと思っていたことが実は非常識だとわかってきたりして、自社だけでなく業界の進歩・発展につながると思っています。

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